
目次
マーケティングは「広告を出すこと」や「SNSを運用すること」と同義ではありません。
本来のマーケティングは 事業が“売れ続ける仕組み”を構築する体系的なプロセス です。
そのためには、単に施策を積み上げるのではなく全体設計が欠かせません。
- “誰に”価値を届けるのか
- “どのように”価値が届き、顧客が選ぶ状態になるのか
- “事業フェーズごと”にどんな打ち手が正しいのか
- “組織として”どう動くべきか
今回はマーケティング戦略の基本構造を体系的に整理し、実務的視点や失敗例 を交えながら、事業フェーズ別の戦略設計を解説します。
1. マーケティング戦略とは何か
1-1. マーケティングの目的は「売れる仕組みをつくる」こと
マーケティングの目的は、 “営業しなくても売れる状態をつくること” と理解されることがあります。
実務では、価値供給の一連の流れをつくることが本質です。
- 顧客が抱えている課題が明確になる
- 顧客がその価値を理解できる
- 購入の障壁が取り除かれる
- リピート・紹介が自然に起きる
広告、SEO、SNSなどはその流れの“部分要素”にすぎません。
1-2. 戦略と戦術の違い(現場で起きる典型的な混同)
コンサルの現場で最も多い失敗例は、戦略と戦術が混同されているケースです。
例
- 「リード獲得のために広告を強化する(戦術)」
- 「ブランド認知のためにSNSを運用する(戦術)」
これらは“戦術”であり「何のための施策か」が不明瞭なまま進んでいる状態です。
戦略とはこれらを定義することです。
- 誰に提供するのか
- なぜ自社の価値が選ばれるのか
- どこで勝負するのか
戦略が不明確な状態で施策を積み上げても、短期的な数字は伸びても、事業はスケールしません。
1-3. マーケティング戦略を構成する3つの核
マーケティング戦略は以下で構成されます。
- 市場・顧客理解
- 提供価値(競争優位)
- 成果につながるプロセス設計(KPI)
コンサル現場では特に『顧客理解』が曖昧な会社が多く、ペルソナ・ジャーニーが“作っただけ”で活用されていないケースも多いです。
2. マーケティング戦略を組み立てる基本フレーム
2-1. STP:ターゲットと立ち位置を決める
STPはマーケティングの根幹です。
ただし、実務では1番使われていないフレームでもあります。
- Segmentation:市場の切り分け
- Targeting:狙う顧客の選定
- Positioning:自社価値の立ち位置を定義
STPの失敗例
- ターゲットを広げすぎる
- ポジショニングが競合と同質化する
- カスタマージャーニーに落ちていない
特にポジショニングは明確に尖らせることが重要です。
2-2. 4P:価値が“届く仕組み”をつくる
4Pとは企業が市場に価値を届けるための「仕組みそのもの」です。
- Product:提供価値の設計
- Price:価格による位置づけ
- Place:どこで価値に触れるか
- Promotion:価値の伝え方
実務の失敗例
Promotion(広告)だけ改善しても、ProductやPriceがズレていると勝てない。
この“構造的なミスマッチ”は非常に多く見られます。
2-3. カスタマージャーニー:顧客の意思決定プロセスの理解
ジャーニー設計は“顧客の心理変化”を理解するためのフレームです。
認知 → 興味 → 理解 → 比較 → 購入 → 継続
よくある誤り:ジャーニーが企業視点になっていること
“顧客がどう感じてどう行動するか”に焦点を合わせると、施策の優先順位が自動的に正しく並びます。
2-4. KPI設計:逆算で設計しなければ意味がない
売上目標 → 必要顧客数 → CV → CVR → トラフィック
“逆算の構造”が重要です。
実務での典型的な問題
- KPIがバラバラで部門間が連携しない
- 施策の成功基準が曖昧
- 達成しても事業成長に結び付かない
KPIは“組織を同じ方向に向かわせる指標”でもあります。
3. 事業フェーズ別のマーケティング戦略
3-1. 立ち上げ期(0→1):価値仮説の検証が最優先
このフェーズで意識すべきポイントは、「売る前に“価値が存在するか”を検証すること」。
実務での成功パターン
- 顧客インタビューで課題を深掘り
- 小さなLPで反応を計測
- プロダクトの価値訴求を複数パターン試す
- 売れる“理由”を明文化する
失敗パターン
- プロダクトづくりに全投下し市場検証が遅れる
- STPが曖昧なまま広告を出す
- KPIが設定されていない
スピード感と仮説検証が最も重要なフェーズです。
3-2. 成長期(1→10):仕組み化と連携によるスケール
価値が受け入れられ始めた段階では、以下が重要になります。
- 一貫したブランド体験の設計
- マーケ × 営業 × プロダクトの連携
- 顧客データの統合と活用
- LTV改善とリピート率向上
現場でよく起きる課題
- 部門ごとにKPIが違い、連携が崩れる
- ブランドメッセージが統一されていない
- 見込み顧客データが活用されない
“組織的にスケールする仕組み”が必要です。
3-3. 成熟期(10→100):価値の再定義と顧客深耕
成長の壁に直面するフェーズでは、顧客理解の深掘り × 価値の再設計がカギになります。
- カテゴリ内での立ち位置の再定義
- ブランド価値の再構築
- コホート分析でLTVを最大化
- 顧客体験全体(CX)を再設計
大型企業の事例では “既存顧客への深耕こそが最大の成長源” になっているケースが多く存在します。
4. 集客設計は「価値の流れ」を設計する
マーケティングにおける集客設計は、広告・SEO・SNSといった“チャネルの比較”ではありません。
本質は、顧客に価値が一貫して届くプロセス(Value Flow)の設計です。
4-1. 価値が届くまでのプロセスを可視化する
顧客が価値を感じて購入に至るまでには、このような流れが存在します。
- 課題を自覚する
- 情報を集める
- 比較して合理化する
- 自分に合うと確信する
- 実際に購入する
- 継続・紹介する
これを可視化すると、どのポイントで価値が伝わっていないかが明確になります。
4-2. 競争環境から“勝てる接点”を見極める
集客設計では、以下の視点が最重要です。
- 競合が強い接点
- 競合が弱い接点
- 顧客が最も価値を感じるポイント
- 自社の強みが活きる瞬間
チャネルは“相対的な競争環境”で優先度が決まります。
4-3. 点ではなく線で価値を届ける
施策単体では顧客は動きません。
一連の“線”で価値を設計する必要があります。
- 認知 → 理解
- 理解 → 確信
- 確信 → 行動
- 行動 → 継続利用
これは“部分最適(個別施策)”ではなく“全体最適(エクスペリエンスデザイン)” の考え方です。
4-4. CX(顧客体験)を中心に意思決定する
最終的に、すべての意思決定は「顧客にとって一貫した価値体験になっているか」を基準に行うべきです。
広告、SEO、SNS、営業、サポート
これらはすべて“顧客体験の一部”であり、バラバラに最適化しても成果は最大化しません。
5. さいごに
マーケティング戦略は「価値 × 顧客 × 組織 × フェーズ」で決まります。
マーケティングの本質は以下の4つです。
- 顧客理解の深さ
- 提供価値と競争優位の明確化
- 事業フェーズに応じた戦略の違い
- 組織全体で価値体験をつくる仕組み
マーケティングは施策の集合ではなく、事業成長をデザインする“経営の一部” です。
この構造を理解しているかどうかで、同じ施策でも成果は圧倒的に変わってきます。
本記事がマーケティング戦略の全体像を理解し、事業成長につながるアクションの指針になれば幸いです。